僕らの情熱

ワクワクする人生を。

Andorra【MITIC中編】

【MITIC前編】を読んだうえ、【MITIC中編】を開き、今読み進めようとしているあなた様。

よほどの忍耐力がおありか、最後まで見届けてやろうという優しさがおありか、Andorraへの興味がとってもおありか。

強くて優しい方に違いない。

 

いずれにしても、そんな方にとっては【MITIC前編】に出てきた、序盤の大ボスコマペドローサ(標高2,942m)なんて、ちょちょいのちょい!です。

 

レースは中盤、コースはどんどんあっちの方へ。

 

それでは【MITIC中編】まいります!

よろしくどうぞ!

 

 

パート毎の振り返り

 

Botella~Margineda(エイド4)44km地点

f:id:taka465:20190728121115j:image

まず、フラットなパートが4kmほど続く。全コース中最も走りやすいかな?と思う。

ここを気持ちよく走る。かなーり抑えているが、抜かれることはほとんどない。

どうも平地と登りに関しては、抜かれることはなさそうだ。(これも後で覆るw)

その後、BonydelaPicaまでの登りが始まる。

これが中々の岩場。2kmで400mupだが、進まないw

前後するランナーも同様だ。順位の入れ替わりは全くなし。

えっちらおっちら登り切ると、いきなり下らせ始める。

 

ついにやって来たw

 

通称「マルジネダの下り」

 

久保さんからコース中の要注意箇所としてたびたび聞いていた。

 

とにかく長く、潰れやすい下り

UTMBなど海外レース慣れしている者も愚痴をこぼす

おそらく体験したことのない下り

 

と大変ありがたい脅しを受けているw

 

まずBonydelaPicaのピークから、鎖ゾーン。

こんなとこ通すのかよ?!という絶壁に近い岩場を鎖伝いに降りていく。

 

いやーキテるなーwクレイジーだなーwとテンションは上がっていく。

鎖場を通過すると、周囲の選手はそれなりに下っていく。

 

怪我、怖くないの?

 

久保さんいわく。

ついていかないこと

 

ついていかないんじゃない、ついていけないんですww

 

そんなことを思いながら、ゆっくり下る。

ゆっくりだから、驚くほど標高が下がらない。。。

50m、100m下げるのにどんだけ??

 

時計で現在の標高を確認するたびに、

おいおいお全く下がらんよwとひとり突っ込んでしまう。

 

それでも何とか800mほど下げる。

そこから軽い登り。当然引き続き走れない。

登ったら、またその分下るよね・・・?

登るのは良いんだけど、下るのがなぁ。

 

この辺りから、先を行くRONDAの選手を追い抜き始める。(RONDAとMITCは一部コースが重複している)

MITICの選手の中では、僕の下るスピードは遅いが、RONDAの選手には追い付いていく。

それもそのはず、RONDAの選手はここまで70kmほど進んでいる。

それも前日早朝スタートで炎天下の中を進んだ。

その後、一夜進み続け、また日が昇り始めている。

こんなに走れない上り下りを70kmも。

 

追い抜くときに、「Hola!」と声を掛け合う。

 

同じツアーのKさん、他日本人数人に会う。

皆、相当な経験があるにも関わらず、かなり疲れている。

次のマルジネダでやめようと思う、という方も数人いる。

 

この辺りからRONDAの選手に対する尊敬の念が膨らんでいく。

 

あるランナーが、MITICと記された僕のゼッケンを見て言った。

「MITIC?」

 

君はMITICだよね?私はRONDAだ、と言うだいぶ疲労した声だった。

 

「Respect you.」と答えたのは本心だ。

 

 

残り300mほどの降下は、多少下りやすかったような気がしている。

 

脚は使っていない。

 

本当に?

 

使っていないと信じている。

 

 

だけど脳を使った。

僕にとって、過去最恐の下りは、真正面から強烈なメッセージを送って来た。

 

これでも楽しめるかい?

 

幸いにして、僕は動じなかった。

すべてを楽しめると信じ切っていたから。

 

エイドで久保さんに会ったら、

ここがいかにクレイジーで楽しいコースか報告しなければ。

 

Marginedaのエイドに到着。

ちょうど10時間だった。

元々の見立ては8時間。

捻挫だ何だで何かあったら10時間と見込んでいた。

正直、何のトラブルもない。いたって順調。

それで10時間。

 

ゴールまで28~29時間かかる可能性がある。

 

サブ24(24時間切り)は厳しいのか?

 

これを18~19時間で勝つ選手は、ここまでどうやって進んだのか。

 

下りの時間が想像以上にかかる。

登りも想像以上だな。

ガレ場度合いがちょっと未体験ゾーンだな。

でもこれは攻略しがいがある。

あー上手くなりたいよ。

強くなりたい。

 

すぐに久保さんに会う。久保さんは落ち着いた笑顔で僕を迎えてくれる。

僕は開口一番。

「いやーやばいっすね!ぜんぶ想像以上っすよ!?」

久保さんは嬉しそうだ。

 

「何食べます?梅干し、そーめん、味噌汁。しっかり補給してくださいね」

梅干しを数粒口に入れる。

「うっは!すっぺえ!!」

「暑くなりますから、しっかり塩とってください」

現在時刻は8時だが、だいぶ暑くなってきているのを感じていた。

確かに乾燥しているし、このまま日が昇り切り気温が上がるとやばい。

 

エイドは、うなだれている選手やひっくり返っている選手で溢れている。

 

正直、こういうカオスな状況は好きだ。

 

MITICの選手もいるが、やはりRONDAの選手が多い。

 

「いやこれRONDAやばいっすね!」

「最難関100マイルですから」

 

有り難く蕎麦と味噌汁をすすり、トイレを済ませ、出発する。

 

「久保さん、次の登りのあとから頑張るんですよね?」

「そうです、次の登りはまだ我慢です」

「了解っす!!」

少し強がっている自分がいた。

 

この辺りから、できる限り応援の人とハイタッチをしながら進んでいく。

ハイタッチをするととんでもなくエネルギーをもらえることに気づいたのだ。

ハイタッチ走法を使って、Andorraを楽しみきる。

 

Botella~Margineda(エイド4)のまとめ

 

✔重要区間

✔Botellaエイド後の走れる区間を飛ばさない。

✔BonydelaPicaの登り降りは岩場・鎖場の危険地帯。くれぐれも安全第一で。

✔Marginedaの下りは心の準備以上に長い。中々標高が下がらないが気にしない。

✔とにかくハイタッチ。力をわけてもらう。

 

Margineda~Claror(エイド5)55km地点

f:id:taka465:20190728121115j:image

次の登りとは、CollBouMortまでの8.5km約1500mupの区間のことだ。

ピークをとった後にあるClarorのエイドまでひたすら登る。

 

ひたすら登る練習は積んできた。

富士山、塔ノ岳、各地の峠、トレッドミル、バイク練。

 

だがそのどれよりも強烈な登りだった。

序盤数キロ(RONDAと重複している部分)は比較的登りやすかった。

木陰のあるつづら折りで登る、よくあるトレイルの登りだった。

多少、高度が上がりにくいなと感じた程度だ。

 

数キロをこなし、RONDAのコースと分かれると、様子が変わった。

まず炎天下だ。バルセロナ到着から感じていたが、ヨーロッパは日本と比べてとても乾燥しており、日差しが強い。

ヨーロッパのレースに詳しい方々から、久保さんからも聞いてはいたが、確かに汗がでることなく乾いていくカラッカラな暑さだ。

そんな状態で身を隠す場所がほとんどない開けた登りがずっと続く。

足元はガレていく。

そして最も想定外だったことは、進みにくいフラットな区間と激登りのミックスだということだ。フラットな区間においても、登っている気になるため、よけいに高度があがっていかない気になってしまう。

高度は一向に上がらないのに、水は減っていく。

 

同じチームのKさんがかのBADWATERで快挙の報を思い出す。

BADWATERと比べたら、何でもないよ?とおどけてみせる。

 

が、乾燥した強烈な日差しがジリジリ僕を削ってくる。

これまで登りでパスされることはなかったが、ここで数人にパスされる。

 

この日差しですげーな。

 

押そうと思えば押せたと思う。だがそれは玉砕覚悟のプッシュになるし、まだ中間地点だ。

押したら、たちまち熱中症となりひっくり返る自分がイメージできた。

しかし暑いし日差しが痛い。

 

と、前をいく選手が少ない木陰に身を隠した。クールダウンしている。

 

そうだよな。そうでもしないと、終わるよな。

 

その姿をみて、Andorraの暑さ・日差しに対応できていない自分をやっと受けいれた。

強度をさらに落とし、ときおり木陰で休みつつ進んだ。

1分だけ。1分だけクールダウンする。

木陰に入るために、多少コースから外れる必要もあった。

 

かっこわりーなぁw

でも潰れるよりはマシだよ。

木陰で一休み、なんて初めて。これも楽しいよ。

 

Marginedaのエイドで携帯する水の量を1.5Lに増やして正解だった。

ペラペラつきのサンバイザー、サングラスも正解だった。

欲を言えば、頭頂部が隠れるちゃんとした二等兵帽があると良かった。

 

先のClarorのエイドから逆走してきたサポートから、氷入りのペットボトルを受け取り、体を冷やしながら進むランナーもいた。

 

そうだよなw同じ人間だよな、と安心した。

 

CollBouMortのピークを越えて、ガレ場の一気下り。

鈍い僕もさすがにわかってきた。

このパターンw

相変わらず、下りはバンバン抜かれていく。

この辺りから、ハイカーが増えたように思う。

あるティーンエイジャーのグループに、僕はハイタッチで突撃した。

皆喜んでくれ、よくわからない応援歌を全力で歌い続けてくれていた。

 

Clarorのエイドに到着。山小屋のホースから流れる水で体中を冷やした。

ホットスポットを遠慮なく冷やすw

 

小屋に入り、オレンジを齧る。

やはり中では数名が潰れている。

 

ジェルのゴミを捨てたとき、ふと気づいた。

ゴミ袋にジェルのゴミが少ない?

思えばこれまでのエイドもそうだった。

ジェルをとっている者をあまりみない。

その代わり、皆しっかりエイドの固形物を食べている。

僕はエイドを後にしながら、補給スタイルの違いをあとで久保さんに聞いてみようと思った。

(最近、ジェルからバーやパフなどのナチュラルな補給物に流れが来ているとゴール後聞いた。)

 

Margineda~Claror(エイド5)のまとめ

 

✔暑さ対策を入念にする(天気次第?)

✔携帯する水の量を増やす

二等兵帽、スカーフなど首筋を隠せるものを身に着ける

✔汗が出ないため、暑さに対する体の反応に注意する

✔やばいと思ったら強度を落とす

✔なかなか標高があがらないことを気にしない。皆一緒である。

 

Claror~Illa(エイド6)66km地点

f:id:taka465:20190728121115j:image

Clarorのエイドを出て、少し下るとフラットな区間となる。

 

この辺りから、Tiagoというポルトガルの選手と前後することが多くなった。

下りで引き離され、フラットから登りの区間で僕が追い付く、という具合だ。

 

ときおり、僕を含めた周囲の選手にポルトガル語で何か言うが、意味はよくわからないw

コース上は湖?池?がときおりあって、Tiagoは湖が好きな様子。

順位を上げることにも真剣だが、湖の写真を撮ることも怠らない。

あるとき、写真を撮ってくれと言われ、うなずき撮る僕。

かといってペースを合わせて進むことはない。

抜きつ抜かれつを繰り返す。

 

その後ColladaMaianaのピークを

越えるとまたガレ場の下り。

日差しは引き続き強い。だがこの辺りから小川が出てくるので、こまめに体を冷やしながら進む。また、この辺りからRONDAコースと合流したように思う。

基本、RONDAの選手はパスするが、ここで一人のフランス人に抜かれた。

彼はRONDAの選手だった。

フラットなところを、トコトコ走りで進む僕のペースよりも彼の大股歩きの方が速かった。

そして、あるタイミングで先行した僕が小川で体を冷やしていると、僕を心配して声をかけてくれ、またガシガシ登っていったのだ。

彼は僕が理想とする強くて優しい選手だと思う。

 

Illaのエイドにかけての登りもまた絶景だ。ずっと遠くの山々まで見渡せる。

日差しは相変わらずだが、ときおり吹き抜ける風が気持ちいい。

 

1.5Lの水をちょうど飲み切ると同時に、Illaのエイドに着いた。

 

昨年までIllaのエイドは大型の山小屋を利用していたそうだが、今年は山小屋前のテントをエイドとしていた。

暑さのこもったこじんまりしたテントに入ると、やはり数人が横になっている。

僕は特にRONDAの赤ゼッケンの選手に敬意を払いながら、水を補給し、コーラを飲み、オレンジを数個食べ、出発。

 

『Claror~Illa(エイド6)』のまとめ

 

✔気温・日差しが厳しければ、小川の水で体を冷やす

 

Illa~Grau Roig(エイド7)73km地点

f:id:taka465:20190728121115j:image

Illa小屋からColladaPessonsのピーク(約2,900m)まで400mup。

エイドを出た直後ということもあり、比較的高度を上げやすい。

 

もう何度目だろうか、Tiagoと再会する。

彼は僕を確認すると、登りで僕を先行させる。

(後から振り返ると、苦手なパートは先行させ、後ろにつくクレバーな選手が多かった)

 

そしてまたある湖に出くわしたところで、

彼は一緒に写真を撮ろうと言ってきた。

僕は何だか自分が認められた気がして、以下のとおり満面の笑顔w

f:id:taka465:20190728121255j:plain

だけど彼には次の下りで引き離され、その後僕が追い付くことはなく、ゴールタイムで1時間半の差がついていた。

彼の方が強かった。

 

ピークを越えると大エイドであるGrauRoig(73.5km地点)まで下っていく。

下り序盤はガレているが、徐々に下りやすくなっていく。GrauRoigはスキー場の山小屋であり、近づくにつれて応援も増えてくる。

人に会ったら必ずハイタッチ。

一段と声をかけてくれ、エネルギーをどんどんもらう。

 

この辺りから応援のフランス人から、

 

Bravo!」

 

という言葉が増えた。

 

下りきったら残すは山3つ。

はやる気持ちを抑えながら、でもハイタッチは欠かさずに下っていき、GrauRoig小屋で久保さんに出迎えられた。

 

Rondaの選手サポートとの兼ね合いで、久保さんに会えない可能性もあった。

 

なるべく期待をしないように、久保さんが居たら儲けものだなと思うようにしながら下ったが、久保さんが「別府さーん!」と声を出してくれるのを見たとき、とても嬉しかったことを覚えている。

 

デポバッグを受け取り、久保さんと陣取っている山小屋のウッドデッキの一角に向かう。

「いよいよ山3発ですね。最後の下り、走れると気持ちよいですよ」

「走りますよー!」と答える。

 

僕がこれまでのコースのクレイジーさ・楽しさを話すのを、久保さんはニコニコして聞いてくれる。

ここで梅干しと蕎麦を食べる。水は麦茶に変えてもらった。

ロングレースのとき、これまでの僕はジェルのみというスタイルだったが、ここで食べた梅干しと蕎麦は、特別にウマかった。

 

と、ここでデポバッグからジェルを補充していると、3~5時間分足りないことに気づいた。

(実はもう1パック、デポバッグの底にあったのに!)

あとから振り返ると、この時点でまぁまぁ疲れていたのだと思われる…w

 

そしてこのときの僕は、まぁエイドの固形物を食べていけば良いかーと気楽に考えた。

 

久保さんと声を掛け合い、元気に出発!

エイドの皆さんともハイタッチw

スタート地点で演奏してくれていた太鼓のグループがドンドン鳴らしてくれていて、ワーワー言いながらの出発だった。

『Illa~Grau Roig(エイド7)』のまとめ

 ✔中盤以降も抜き返してくる選手が多い

✔デポバッグからの補充は冷静に

✔ハイタッチでテンション↑↑

 

(後編へ続く)