僕の父AKIRA。
息子ARATAの始めと終わりがAなのは、
父が理由だ。
Aで始まりAで終わる文字列が最高に格好良い。
父はほとんど喋らない。
健康診断も受けない。
金型をつくり続けて40年。
父が鉄の塊に触れると形が変わっていき、金型が出来上がる。仕事が詰まると、コーヒー片手に庭をうろうろする。
夜更けに仕事をすることもある。
黙々と鉄の塊と向き合う父の姿は格好良い。
あるとき、
孫のARATAが「スキーで世界一になるよ」と言ったことを
母伝いに聞いたようで僕にぽつりと尋ねた。
「世界一を決めるレースはヨーロッパで開かれるのか?」
「そうだろうね」
「母さんに、一緒に観に行くかと聞かれたよ」
「おぉいいね。行こうよ、楽しいよきっと」
「うーん」
「いやいやそれはさすがに行くでしょ」
「そうか?」
「行くってたぶん」
「まぁ行くか。行くだろうな、うん」
渋めの反応が父らしかった。
さて。