あるコーチがARATAにかけた言葉。
「新太ぁ、スキーするために生まれてきたみたいだな」
「そんな体に生まれてきて、ほんとよかったなぁ」
「来シーズンも顔見せてくれよ」
僕には、彼が本当にそういう生まれ方をしたかどうかわからない。
ただ、この数か月で僕は彼の情熱に完敗した。
昨年12月にSKIデビューした彼の熱量。
28日間の記録。
行動時間 116時間(リフト込み)
滑走距離 996km
僕ひとりならこんなに滑っていない。
彼が「たのしい」と繰り返すから。
どんな天候でも彼がアタックするから。
彼が行先を決断しGOサインを出すから。
僕は彼を乗せてひたすらハンドルを握った。
100マイルレースでつちかったフィジカルとメンタルをフル活用して。
彼の「たのしい」「大好きだ」という熱量は、
まず僕を巻き込み、次に妻を巻き込んだ。
それから、彼を見るコーチを巻き込んだ。
それから、リフトマンやレストハウスのスタッフを巻き込んだ。
「たのしそうに滑るねぇ!うしろつかせてよ!」
そんな風に初対面のスキーヤーを巻き込んだ。
果たして彼が特別なのか?
そうは思わない。
彼はただ「たのしい」「大好きだ」といってひとつのことに夢中になっているだけだ。
これは特別なことではない。
多くの人が本来もっているものだ。
こどもの頃は特に。
冒頭の彼とコーチのやりとりは、以下のことを証明している。
「たのしい」「大好きだ」といって約30日間夢中になれば、
ゼロからのスタートで誰かを感動させることができる。
誰かに勇気を与えることができる。
いつでも、誰にでも可能なことだと僕は信じ始めている。