山で人に会うと必ず追い抜く彼。
相手がランナーや速いハイカーでも、
一定時間、先行する。
相手を先行させないように必死になる。
後ろをチラチラ気にして、俺のほうが強いに決まってると信じている。
対等に競争するかのように。
そして、帰りの車で寝入る前、きょうのあのひとはこうだったとか、あのひとはあのままどこまでいくんだろうという話で盛り上がる。
ふと、そんな風に相手をしてくれた方々は、彼に対してよくある質問を「しない」傾向にあると気づいた。
よくある質問とは。
「いくつなの?何歳なの?」
そんなとき、彼の答えに対する反応は、「わーすごいねーえらいねー」というものがほとんどだ。(最近の彼はなぜか、「6歳だよ。ENAは8歳で、とーちゃんは36歳だよ」と答える。)
ある哲学者は、褒めるという行為は上下関係を前提としているもので、対等ではないという。
年齢に対して「褒める」行為を、何度もそばで眺めていると、たしかにそうだなと思う。
大人同士、いきなり年齢を尋ねることがあるだろうか?
そして、彼とつかの間のバトルをしてくれた見ず知らずの方々は、その質問をしない。
そのかわりに。
「強いな」とか「いつもどんな山に登ってるの」とか「今日はどこまで行くの」とか対等な声をかける。
事実、対等だと思う。