読書感想#22 鬼攻め 佐々木明
本音の文章を書くのは難しいです。
何段階かで、いろんなものが削ぎ落とされてしまうものです。
削ぎ落とすことが良い場合もありますが、出来上がった文章は、本音そのものではなくなります。文章である以上、わかりやすさや伝えることに重きが置かれるとは言え、日々目にする文章に物足りなさを感じる方も居るだろうなと思っています。
今の風潮として、本音の雰囲気を味わうには、ライブ映像に求めることが多いですが、それは本書のような本音本が少ないせいもあるでしょう。
構成を考える、思いや考えを文字にする、文章にする、出版という公のものに値するか推敲する、、、この過程で省かれるものが多いのは誰のせいでもありません。
だからなおさら、本音むき出しの文章に僕は惹かれます。
本書は、オールマウンテン・スキーヤーである佐々木明氏が書いた、自伝です。
限りなく本音に近い本かと思います。
もちろん編集者がついたうえでの出版物ですが、ありのままの言葉でしょう。
スキーヤーとしての軌跡が書いてあります。
勝つことにこだわり世界一を目指したこと、でも1番になれなかったこと、オリンピックで後悔していること、家族のこと。
ひとつ抜粋を。
「プレッシャーを感じるかどうかも、結局は自分次第だと思う。
レースの前は、いろいろな人の応援が耳に届く。
注目し、期待してくれる人がたくさんいるというのは、モチベーションを高める材料になる。
でもそこで、頑張らなきゃいけないと過剰反応するのは、完全に自分の中での尺度。
頑張るのは当たり前のことなんだから、他人の期待ではなく、自分自身の意志として最高のパフォーマンスを出そうとすればいい。
それはプレッシャーではなく、プッシュになる。
自らをプッシュしていれば、周囲の期待をプレッシャーに感じて萎縮するヒマなんかないとオレは思う。」
他にも、うなる箇所がいくつもありました。
本書を読んで、僕がアスリート(本)に惹かれる理由がわかりました。
アスリートは丁寧に自身と向き合っているからです。周囲の雑音が多いアスリートほど、その傾向が強いのかなと思います。
自分自身をきちんととらえていて、ポンとシンプルな言葉にできるアスリートに僕は憧れます。